最近量子コンピュータに関する書籍も様々出版され始め、何を使って勉強すればいいのかわからないという方(私もですが)がたくさんいると思うので、1年間業務の傍ら勉強してみた9冊の参考書のレビューを書きます。
5段階評価でおすすめ度も一緒に書いておくのでよかったら選ぶ参考にしてみてください。
初心者向け
量子コンピュータが本当にわかる!第一線開発者がやさしく明かす仕組みと可能性
おすすめ度:
私が所属していた学科の先生が書かれた本で、まず量子コンピュータとは何だというところから勉強を始めたい方にはぜひ読んでいただきたい一冊です。
数式を持ち出さず絵や図を使って量子コンピュータの仕組みからなぜ高速な計算が可能なのかを説明をされているので非常に読みやすいです。また最後の章には武田先生のご専門である光量子コンピュータについて取り上げられていて、他の本ではあまり扱わないトピックなのでここについてもぜひ読んでいただきたいです。
いちばんやさしい量子コンピュータの教本
おすすめ度:
とにかく簡潔に量子コンピュータがどんなものかを知りたいというところから始める方におすすめの本です。図が豊富で数式を持ち出さずに書くトピックをうまく解説してくれているので特に前提知識がなくても理解することができます。
ただあまりに簡潔に説明しすぎているのでこの一冊だけだと腑に落として理解するのはなかなか難しいかもしれません。最初の導入としてはおすすめです。
初級者向け(概念的な理解はあるけど数式はフォローできない)
今度こそわかる量子コンピューター
おすすめ度:
量子力学も含め量子コンピュータの本は概念的な説明にとどめるものと、数式をゴリゴリに使って説明する本のどちらかである場合が多い印象ですが、この本は概念を理解した人が本格的に数学を使った説明を見る前に読むと橋渡し的な存在として機能するのではないかと思います。
数式といっても説明の根拠沿えの利用にとどめてくれているので、大学初年度レベルの計算力があれば全く問題なく理解できると思います。また他のホントは説明のニュアンスが少し違うので違って視点から同じものを見ることもできて勉強になります。
IBM Quantumで学ぶ量子コンピュータ
おすすめ度:
量子コンピュータをプログラミングを通して勉強したいという方にぜひおすすめの本です。
このブログでも取り上げているQiskitという量子計算ライブラリを使いながら量子コンピュータのアルゴリズムの基礎を学ぶことが出来ます。
レベル感としては公式のQiskit Textbookよりも更に難易度を下げてより初心者に向けてアプローチをしている感覚です。アルゴリズムの説明に多少数式が出てきますが難しい計算をしているわけではないので数学が得意でない方でも勉強になる本です。
中級者以上(数式のフォローが必要に応じて可能)
量子コンピューティング 基本アルゴリズムから量子機械学習まで
おすすめ度:
非常に良い本だと思います。量子コンピュータを使って実装する際にどういうアルゴリズムを何のために使うのかという観点は必ず疑問に思いますよね。この本はタイトルの通り基本的なアルゴリズムを概念的な説明にとどめず数式を用いて説明してくれています。
現在の量子コンピュータの話題は論文を始めとした英語文献がメインソースとなりますが、そういった文献を読む際に説明されず基本知識とされている部分をこの本は日本語で解説してくれているのでとても重宝しています。
プログラミングの本ではないのでご注意ください。
詳しいレビューはこちらの記事にあります。
量子アニーリングの基礎
おすすめ度:
この本はゲート式の量子コンピュータではなく量子アニーリングに特化したとなっているため他のホント毛色が違う本です。そのためそもそも量子コンピュータとは何かから勉強したい方にとっては視点がずれているかもしれません。
そもそもこの本のシリーズが物理の新しいトピックを大学学部生向け(簡単とは言っていない)に解説したものなので、平気で物性物理や統計力学の式が登場します。そのためある程度のバックグラウンドがない方だと理解できないかもしれないです。
ただ量子アニーリングを平易に解説してくれている本としてとても貴重だと思うのでトピックの1つとして目は通しておきたい一冊です。
Quantum Computation and Quantum Information
おすすめ度:
量子コンピュータの研究に関わっている方が使う教科書としてまず一番初めに名前が上がるであろう本です。比較的古めの本なので最近の話題については触れられていませんが、量子コンピューティング、量子情報を基本から理解する上ではこの本一冊でまずは十分と言われる理由がわかる気がします。
この本はいろんな場所で引用されているので物理や数学の知識がある程度あり体力のある方であればこの本から勉強を始めてみることをおすすめします。
日本語訳版もある(今は絶版らしいですが)ので英語で読むのが面倒な方はこちらをおすすめします。
こちらが日本語訳版です。
量子情報科学入門
おすすめ度:
この本は大学で量子情報を学ぶ方向けのレベル感で書かれた本です。概念の理解でとどまりがちな部分を数学的にきっちり定義、定式化しながら進むため他の本よりも数学(計算ではない)の理解が求められます。量子情報を専門に扱おうと考えている方でなければとりあえず他の本を優先的に読んだほうがよいかなという感想です。
量子コンピュータによる機械学習
おすすめ度:
今話題の分野である量子機械学習の基礎を学ぶための本です。基礎と言っても内容が簡単という意味では全くなく、量子機械学習を学ぶにあたって土台となる概念を学ぶための本なので内容の難易度もかなり高めになっています。
ただし、この分野に関する日本語の参考書がほとんどない状況なのでこれからAI×量子に興味があって勉強していきたいという方は持っておくといい本だと思います。
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