量子コンピュータ初心者の方が持つこんな疑問にお答えします!
量子コンピュータのニュースを見ていると、従来のコンピュータと比べて非常に速いと書かれていますが、どうしてなのでしょうか?
この記事では量子コンピュータがなぜ高速に計算可能と言われているかについて、ニュースよりも一歩だけ踏み込んで紹介します。
量子コンピュータの高速計算の秘密は量子の「重ね合わせ」
量子コンピュータがなぜ従来のコンピュータよりも高速かというと、量子の「重ね合わせ」という不思議な性質を利用しているからです。
重ね合わせとは一言でいうと、情報を表現するビットが0でもあり1でもある状態を指します。
従来のコンピュータの仕組みと比較しながら量子の重ね合わせについて考えると理解しやすいです。
従来コンピュータの仕組み
従来のコンピュータの仕組みは非常に単純です。
コンピュータの世界では全ての情報は0と1の組み合わせ(ビット)で表現され、素子に格納されます。
各素子はスイッチのような働きを持っていて、スイッチがONの場合は1を、スイッチがOFFの場合は0を表すことで情報を電子素子上で表現しています。
コンピュータの計算は電気信号を通してスイッチを切り替えてビットを操作することに対応しています。
以上をまとめると次のようなことが言えます。
量子コンピュータの仕組み
量子コンピュータの仕組みは異なります。全ての情報が0と1の組み合わせで表現される点は同じですが、情報は電気ではなく量子状態(量子ビット)で表現されます。
量子ビットの最大の特徴は、電圧のON/OFFのように0か1かの確定値を取るだけでなく、0と1が確率的に変化する状態も取ることが出来る点です。これが重ね合わせの状態と呼ばれる状態です。
例えば上の図のように4量子ビットが重ね合わせの状態の場合、「0000」から「1111」までの$2^4=16$通りの状態を一度に表現することが可能です。
最終的な状態は、例えば5%の確率で「0000」、12%の確率で「0101」が現れるといったように確率的に決まります。
以上をまとめると次のようなことが言えます。
なぜ量子に重ね合わせの性質が存在しているのか
量子ビットには重ね合わせという不思議な性質があることを知った上で、次にこんな疑問が浮かぶのではないでしょうか。
なんで量子ビットは普通のビットと違って重ね合わせの状態をとるんですか?
実はよくわかっていません。
というのも現在の物理学は下のような解釈で学問が成り立っているからです。
- 量子のような私たちの目に見えない世界では、目に見える世界の物理法則は通用しない
- 重ね合わせのような性質があると考えると、量子の世界が上手に説明することが出来る
なので、量子ビットには重ね合わせの性質があるというのは、深く考えすぎずにそういうものだと受け入れてしまうのがいいのかもしれません。
重ね合わせがどのように高速計算を可能にするのか
では本題に戻って、なぜ量子コンピュータでは量子の重ね合わせを利用すると高速計算が可能となるのでしょうか。
それは量子ビット上で複数の情報を同時に表現できるので、一度の演算で複数の演算を同時に実行できるからです。
具体例を挙げて考えてみましょう。
例:3ビットを使って演算する
例えば0から5の6つの数字に対して2を足すような計算を考えてみましょう。数字の表現のために3ビット利用するものとします。
従来コンピュータでは1つのビットには1つの情報しか表現できないので0から5の数字をそれぞれ3ビットずつで表現して1つ1つ足し算を行う必要があります。
一方で量子コンピュータでは量子ビットの重ね合わせを利用すれば、3量子ビットで全ての数字の情報を表現することが可能なため1回の足し算で計算を終わらせることが出来ます。
このように量子の重ね合わせを利用すると、従来のコンピュータよりも少ない計算回数で演算が可能という点で量子コンピュータは高速だといわれています。
まとめ
この記事では量子コンピュータの超高速計算の秘密として量子の重ね合わせの性質について説明しました。
最後に一点注意してほしいのは、たしかに量子コンピュータは重ね合わせを利用することで高速計算が可能とされていますが、現実には全ての計算に適用できる夢のマシンではなさそうだという点です。
量子コンピュータの演算は量子演算が適用できそうな問題に限り、従来コンピュータよりも高速に計算出来る可能性があるというのが現状の正しい理解になります。
一体どういうことなのか、量子コンピュータは結局何に利用できるのかについて体系的に知りたい!という方は入門としてこちらの本をおすすめします。
数式を持ち出さないで量子コンピュータについてわかりやすく解説してくれているので、初学者の方でも、文系の方でも楽しく読める一冊です!
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